金工 大角幸枝 南鐐花瓶 「遠い海」

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金工 大角幸枝 南鐐花瓶 「遠い海」

金工 大角幸枝 南鐐花瓶 「遠い海」

日本の金工作家で人間国宝の、大角幸枝 (オオスミ ユキエ) による、銀製の花瓶です。
南鐐とは、精錬した上質の美しい銀の事です。
上質の銀を用いた、美しい花瓶。
風や波のように形のないものを器に託して自然の情感を表現。
平成17年(2005年)の、第52回日本伝統工芸展に出品された作品です。

楕円形の銀板を打ち窪め、打ち上げて花器の形を作り、表面には波状の文様を打ち出し、海の渦や波模様などを、金と鉛の布目象嵌の技法で表現しています。
布目象嵌は南蛮渡りの技法で、古くから日本的な表現が試みられています。
柔らかな布目象嵌の風合いと白銀の煌めき、いぶし銀特有の渋さをマッチさせ、水墨画風の味わいを表現しています。

銀の持つ様々な表情を巧みに組合せ、緻密で味わい深い質感を創出しています。
銀の気品ある静かな佇まいの中に、海の情感を思わせる動きと、繊細で精緻な美しさが表現されています。

用いられている技法は、「鍛金(たんきん)」「象嵌(ぞうがん)」「打ち出し(うちだし)」と言った技法です。

鍛金は、金属を叩き上げて形を作っていく技法。
木台の凹部の上で、板状の金属を木づちでたたいて曲げます。そのあと当金と言う色々な形の鉄の棒を木台にさし、だんだんと形を作ります。一つの作品ができあがるまでには何万回もたたきます。
作品の厚みが薄く仕上がり、軽くて丈夫。
叩いた事が分からないくらいなめらかに仕上げたり、また、叩いた跡を残す事により、味のある仕上がりにもなります。

象嵌は、金属の表面に模様を彫り別の金属を嵌めこんで、それぞれの金属の色や質感の違いによって模様を表現します。

打ち出しは、金属の板をいろいろな鏨を使って、表裏の両面から何回も打つことによって立体的な形をつくります。
出来上がった形はもり上がりが高いものと、ブローチや着物の帯どめ金具のような低いものがあります。

大角幸枝は、鍛金技法で成形した器に、布目象嵌を主とした彫金の伝統技法により、波、流水、雲、風など、形の無いものをモチーフとして自然の情感を表現する作風を特徴としています。
花器を始め、茶道具、書道具など伝統文化の中で使用される器物や、生活空間を演出する造形を心掛けて制作しています。
東京芸術大学出身。卒業後、鹿島一谷、関谷四郎、桂盛行と言った金工作家に師事。
金工芸の「鍛金」で、2015年に、国指定重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。
鍛金や彫金といった金工の分野では女性初の認定者となります。
日本工芸会正会員。

金工 大角幸枝 南鐐花瓶 「遠い海」

金工 大角幸枝 南鐐花瓶 「遠い海」

金工 大角幸枝 南鐐花瓶 「遠い海」

金工 大角幸枝 南鐐花瓶 「遠い海」

[出典]ギャラリージャパン, Onishi Gallery


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1件の返信

  1. 2018年12月9日

    […] 以前、ご紹介した同じく大角幸枝作の「海峡」や、「遠い海」のように、海とそのうねりをモチーフにした作風が多い印象の作家ですが、本作では、水の縦線のイメージをモチーフにしています。 […]

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