ファベルジェの卵 冬の卵 1913

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ファベルジェの卵 冬の卵 1913 ( Fabergé Imperial Eggs Winter 1913 )

( Fabergé Imperial Eggs Winter 1913 )

透ける氷の塊のなかに、雪片が静かに降り積もる。
ロシアを代表する貴金属工芸の名作シリーズ、Fabergé(ファベルジェ)の卵です。今回ご紹介するのは、1913年に制作された「冬の卵(Winter Egg)」——皇帝ニコライ2世が、皇太后マリア・フョードロヴナへイースターに贈った、インペリアル・イースター・エッグのひとつです。

ファベルジェの卵は、ロシア王室ご用達であった宝飾・金細工師ピーター・カール・ファベルジェ(Peter Carl Fabergé)が、1885年から毎年のように制作したイースター・エッグのシリーズです。アレクサンドル3世が始めたこの贈答の習慣は、息子ニコライ2世の時代には皇后アレクサンドラと皇太后の両方へと広がりました。冬の卵は、皇太后への1913年分の贈り物です。

ファベルジェの卵 冬の卵 1913 ( Fabergé Imperial Eggs Winter 1913 )

作品の骨格は、精巧に彫り込まれたロッククリスタル(水晶)の卵そのもの。内側には霜の模様が刻まれ、外側にはローズカット・ダイヤモンドを散らしたプラチナの雪片モチーフが重ねられています。側面にはダイヤモンドの帯が走り、そこに蝶番が隠れて卵を開くことができます。頂部には1913年の年号を示すカボション・ムーンストーンが据えられ、台座は溶けゆく氷塊を思わせるロッククリスタル——中央から伸びるプラチナのピンが卵を支え、表面にはダイヤモンドの細流が走っています。卵と台座を合わせた高さは約14.2cm。

ファベルジェの卵 冬の卵 1913 ( Fabergé Imperial Eggs Winter 1913 )

ファベルジェの卵 冬の卵 1913 ( Fabergé Imperial Eggs Winter 1913 )

4000個を超えるダイヤモンドが用いられたと伝えられるこの卵は、装飾の密度と透明感のバランスが見事です。水晶の透明な体に、プラチナの雪片が浮かび上がる——寒さと輝きが同時に立ち上がるような造形は、1913年のサンクトペテルブルクの冬を思い起こさせます。第一次世界大戦の前夜、ロマノフ朝の最後の平和な年に贈られた贅沢品として、その時代の気配を今に伝えています。

ファベルジェの卵 冬の卵 1913 ( Fabergé Imperial Eggs Winter 1913 )

ファベルジェの卵 冬の卵 1913 ( Fabergé Imperial Eggs Winter 1913 )

卵を開くと、プラチナのフックから吊るされた「サプライズ」が現れます。ダイヤモンドの格子状バスケットの中に、白石英から彫り上げられたイヌズル(Wood Anemone)の花々が咲き誇ります。花弁の中心にはデマントイド・ガーネット、茎は金線、葉はネフライト(軟玉)、根元には金の苔——底面には「FABERGÉ 1913」の刻印が入っています。サプライズ単体の高さは約8.2cm。冬の静けさのなかに、春の花が息を潜めているかのような対比が、この作品の詩情を深めています。

ファベルジェの卵 冬の卵 1913 ( Fabergé Imperial Eggs Winter 1913 )

ファベルジェの卵 冬の卵 1913 ( Fabergé Imperial Eggs Winter 1913 )

アルマ・ピール——雪片を描いた若きデザイナー

冬の卵のデザインを手がけたのは、アルマ・テレジア・ピール(Alma Theresia Pihl, 1888–1976)。彼女は叔父のオスカー・ピールの下で働く金細工師アルベルト・ホルムストロムの工房に所属し、休憩中に描いた雪片のスケッチが叔父の目に留まり、制作が承認されたと伝えられます。ピールはのちに雪片モチーフとモザイク模様でも知られるデザイナーとなり、ファベルジェ工房における女性デザイナーの先駆けとして語り継がれています。工房長ホルムストロムのもとで、1913年のサンクトペテルブルクからこの卵は送り出されました。

インペリアル・エッグは全部で50個以上が制作され、現存は43個とされます。冬の卵はそのなかでも特に芸術的な独創性が高い作品のひとつとして評価され、革命後の混乱を経て海外へ渡り、長く私蔵のなかで大切に保管されてきました。ロシア革命以前の工房文化——デザイナー、工房長、職人が一体となって生み出した極小の宇宙——を今に伝える、貴重な証拠でもあります。

ピーター・カール・ファベルジェ (Peter Carl Fabergé) とは19世紀末から20世紀初頭にかけてロシア王室ご用達となった宝石商・金細工師です。
インペリアル・イースター・エッグでよく知られています。
ファベルジェがロシア王室の注文を受けて製作された数多くの宝飾品や飾り物、文房具、時計等、膨大な工芸品が残されています。

ロマノフ家のアレクサンドル3世とニコライ2世の注文でそれぞれの皇后と母后のために製作されたインペリアル・イースター・エッグと呼ばれる作品群はその独創性に溢れる美しさと、精緻を凝らした仕掛けとで歴史上屈指の工芸美術品として名高いものです。
ファベルジェの卵とも言われます。
1885年から1917年の間に58個作成されたとされますが、数については異説もあります。
現存が確認されず、行方不明となっているものも多くあります。

[出典]Christie’s — The Winter Egg, Wikipedia (en) — Winter Egg

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